國武先生のコシヒカリ物語

~コシヒカリが世に出るまでから
今日的問題まで~

講演記録 スミショート販売10周年に想う 2002.1.24 於 熱海

1. 開発の頃

倒伏軽減剤ロミカ(ウニコナゾールP)と穂肥の混合(浪岡)
農薬事業部と肥料部の交渉打ち合わせ2ヵ年
施肥時期を幼形期へ前進と決め日植協試験へ

1988SDF21→1989地域区分21、21(H)、14公的研究機関:「コシヒカリの穂肥は-18日~に、ササニシキは-15日~に決まっている」(固定概念)

2. 販売普及へ

1991(28) 関東以西のコシヒカリなど
1992(21) 福島・新潟など北陸地域のコシヒカリなど
1992(14) 東北のササニシキ、暖地の転作あとコシヒカリ

基本方針は、基N減、幼形期施用(葉色3.5-コシ、4.0-ササ)水管理など基本技術を厳守、良質多収。

当時の品種、産米事情:新潟のコシヒカリ米戦略(米余りの中での売り手高値販売)に触発されて、コシヒカリ、ササニシキ神話のただ中(日本の稲作を担う力もないコシヒカリが、欠陥もちのまま、流通人気で日本を制圧)(K氏ら、H5)

参照:第1話第2話第3話第4話

3. 普及の反応

西の(28):-18~30日遅まき、または分施
東の(21):-35日早まき希望
北の(14):-15日のこだわり、あきたこまち-25日へやがて一部で、穂肥II多施、含んで穂肥一発化へ、銀泉との混
(56):'89試 '93から販売
(42):'92試 '94から販売 →(35):'95試 '97から

4. あれから10年

コシヒカリ 54万ha、ササニシキ20万haから1.5万haへ
ヒノヒカリ、ひとめぼれ、あきたこまち:10万ha台へ
収量より品質競争(米選強化)、食味重視へ

参照:第2話「作付面積の図」

スミショートのねらいは変わっていないが、中味としては、(21)、(14)が伸び、(56)(42)は伸びず、むしろ、(28)(21)が一発の役割、(35)も局地化。

参照:第5話「粒厚」

5. コシヒカリは変わったのか?

いもち病弱:おおむね克服された。

1974、80、88、93年に大発生、だが、発生予察事業の整備、葉色票利用診断減肥、苗箱施薬、オリゼメート予防剤(1977~)の使用による葉いもち防除の効果で、穂いもち防除がらくに。

倒伏弱:栽培技術の改善(減N)、倒伏軽減剤の併用、コンバインの倒伏稲刈りおこし性能などで、かなり改善されたが、まだまだ大面積のコシヒカリを栽培するのは大変。

農家のことば:「コシヒカリだけは農家をだまさなかった」「スミショートでコシヒカリつくりが楽になった」

良質米生産 機械化移植収穫技術(新潟等3県 1974~1982)
基N減、葉色診断技術、-18日、-10日穂肥、+5日
実肥早期中干し(地耐力)、間断かん水、落水期延長
穂数400本、3.0~3.1万粒、21.5g 玄米N1.3%、1.8mm 570kg
の大きさの稲で、倒伏80度→45度に強化したもの。※

参照:第7話

これが、1981→86の540kg台への収量急上昇を達成
北陸農試、姫田場長、農研西山室長に、コシヒカリが生まれ変わった、生育制御技術の精華といわせた。
(スミショートは、※に対しても、1.1~1.6段階(23度×1.1~1.6=25~35度))
倒伏が軽くなっている。

参照:第9話

その後、食味重視時代化。新潟は、380本、2.8万粒22g、玄米N 1.0~1.1%、1.85mm540kgに修正、極度の生育制御型とし、穂肥II減N、実肥廃止、極限状態における良食味生産化、そのため作付面積の急増もからみ、きゅうくつな経営管理、1990~収量または品質が不安定化。(気象、地力発現で生育量が限度を超えた場合の対応力弱化)

6. スミショート穂肥稲作は何故楽か

基N減、-30~-24日の葉色票は県指針並、穂肥が-25日に前進し-25~20日の幅がある。

中期肥切れによる稲体の活力低下がなく、下位節間での挫折倒伏なく、穂肥は早めに打ち切れる。経営規模増大への対応力あり(診断も大まかで可)。

7. 食味は? (資料1997(H9)、'98(H10)、2000(H12)、2001(H13))

・H9、10(1997、98) コシヒカリばらつき、極上(80~)は1998>19971997:優良(75~79)が主1998:極上と優良が主玄米たん白が増加すると、食味値は低下する((-)の相関)極上はたん白6%台、優良は7%以下。

・H12(2000)コシヒカリ
極上 3点だけ 優良が大部分だが、中でも75~77の下位の優良が主体で、78~79の優良は12点だけ

玄米たん白が6.5%以下が食味値78~80

地域によるばらつきが極大、玄米たん白が高く、食味値良~並の地域がかなり多い。

コシヒカリ以外の品種は、良くない。たん白%7.0%~8.6%、また、水分10~13%という状態で、これは食味を大事にして管理しているとは思われない。

参照:第10話

・H13(2001) コシヒカリ54点だけ
77以下の優良と74以下の良が主。78~79の優良も9点だけ、極上なし。ここでも78~79の優良はたん白%6.5%以下、たん白%が少ないことが食味値を高めるポイント。

参照:第13話

  1997
H9
'98
H10
2000
H12
2001
H13
平均値の傾向
47 17 49 54 (N県スミショート)
TN kg 6.1 6.0 6.1 次第に低下または、新しい農家にスミショートを普及し、本来の使用が守られていないのか
収量 559 568 579
食味値 78 78 77 76
たん白 6.9 6.9 6.7 7.3

8. これからのスミショート穂肥技術

スミショート穂肥で倒伏させないだけでは食味極上にはならない。
極上(80~)、せめて優良(78~79の)になるには、水分14.5~15.5%、たん白6%~6.5%を目標にすべき。

基肥Nは少なく、スミショートの次の穂肥Ⅱは多すぎ、遅すぎないこと、T-Nで6~6.5kgが限度。(14)では穂肥Ⅱが多くなるが、穂肥Ⅱの少ない(21)よりも、たん白が多くなっている。砂地の(35)は少数例だが、たん白は少ない。

参照:第11話

玄米N1.2%(たん白7.1%)のコシヒカリ栽培こよみ・・これは、新潟のたんぱく6~6.5(N1.0~1.1)に比べると、ちょっと甘い目標。

せめてこれくらいをねらう。穂ぞろい期のSPAD値を30をめどに!とすれば、N1.0~1.1にも接近可、(それには、過大な総籾数をつけないように、初中期を小型に制御することが必要。減肥づくりでもスミショートづくりは適度に肥培管理容易のはず。

9. むすび

食味競争:コシヒカリを超える品種はまだない(一類銘柄でコシヒカリ、それ以外では宮城ひとめぼれが1例るだけ)
食味・特Aランクも厳しい条件。

JAS法で(内容表示)いよいよきびしい
(新潟が日本基準表示<新潟コシヒカリ>をはじめた)。
そのような環境の中で、スミショートで極上が少ない作り方では、いろいろと問題が出てくる。

コシヒカリは倒伏しやすい虚弱児。しかし、それをカバーするには、施肥技術の変化をみても、スミショート穂肥は大事な技術。穂肥肥料の利用率は60%(基肥の被覆肥料、側条施肥並みで環境にもやさしい。

以上

'01/11/19

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