國武先生のコシヒカリ物語

~コシヒカリが世に出るまでから
今日的問題まで~

第7話 コシヒカリの一生と、栽培こよみの変化

1) 手植え栽培(~1969)から機械植え(1970~)に移行した当時の生育の乱れ。

5月下旬、7葉苗の2~3本植えが、2葉苗5~6本植えに変わったとき、コシヒカリは茎細、過敏茂となり、倒状がひどくなった。6~7葉の分げつ節位は、II、III、VII、VIII。2葉苗は(II)、III、IV、V、VI、VII、VIII、と連続的だから、極度の減肥をしないと過繁茂になる。

2) 機械化良質米生産、生育制御技術(1974~82、新潟・富山・石川・福井県農試共同研究)の開発

-コシヒカリ栽培こよみ-。

  1. 4月下旬~5月上旬の気温変化に根づきと初期生育が安定化するように、薄まきの健苗を育ててべんとう肥を施す。
  2. 梅雨下での生育の乱れを防ぐために、1株苗数を少なく、基肥チッソを減肥(3kg)、有効茎をえたら6月中旬から中干し、溝切りをする。
  3. コンバインの地耐力前歴を、早期中干しと溝切りで確保する。
  4. 倒状を軽減するため、葉色(葉色票)を幼穂形成期に3.5に下げて下位節間の伸長を少なくし、草丈・茎数・葉色の数値を目安として、出穂前18日とその後数日後に穂肥を分施し、さらに穂揃期に食味を低下させない範囲(玄米のチッソ1.3%以下)で追肥して稈基部を強くする。
  5. 幼穂形成期以降、収穫直前(約10日前)まで、湛水または間断通水をして、高温による稲体機械の低下を防いで、登熟歩合を高め、整粒歩合の高い良質米を生産する。
図:新潟など北陸におけるコシヒカリの標準的生育管理型

3) 栽培こよみに基づく基本技術の普及

栽培こよみは、農業改良普及所、農協ごとに地域版が作られ、収量溝成要素の数値目標と葉色診断指標が急速に普及して、コシヒカリの収量が安定的に向上した。

4) 収量構成要素の数値目標の変化(新潟)

産米競争の激化から、最近の品質食味の研究成果をもとに、玄米のチッソは1.1~1.2%に改められ、選別の篩い目は1.8mmから1.85mmに高められている。収量目標は570kgから540kgに下方修成され、収量構成要素はそれぞれ下方修正し、基肥チッソは2~3kgに、穂肥は2kg以内に減じ穂揃期追肥は禁止されている。

5)

稲体の小型化に伴い、コシヒカリ栽培の自由度は小さくなる一方、経営面積の8割を超える作付率の増大によって、米価の高いコシヒカリの生産には、従来以上に高度の技術の駆使と経営努力が続けられている。

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