3割に増えた転作で大豆が増加している。比較的売りやすいコシヒカリは8割以上に作付けされ、大豆あとに失地の回復を求めている。これまでの、大豆あとには耐肥性品種を5割減肥で疎植で作るという指導方針では説得できにくくなっている。
大豆作期間では土壌が乾く。水稲作に輪換すると、湛水後土壌アンモニア態チッソの発現(初期の乾土効果、中期の温度上昇効果)が増加する。その量は水稲連作用の2倍以上になり、幼穂形成期ころまで持続する。
これに加えて、機械収穫によって残した茎下部、根、ちらばった葉や莢実が、温度上昇に伴って中期から肥効を発現する。その発現は水地温に支配されて変動的である。稲は過繁茂、軟弱徒長して倒伏しやすくなる。
気象・水地温の年次変動に伴う土壌チッソ発現の変動に左右されないように、土壌の肥沃度に応じて基肥チッソを2~3Kgに減らし、幼穂形成期の葉色(葉色票・群落)3.5に制御し、出穂期前18日~10日に2Kg以内の穂肥を分施することを基本としてきた。
しかし、これでは幼穂形成期ころの栄養不足による稲体の脆弱化が心配されるので、住友稲作農法では、ここにウニコナゾールP入りの穂肥を施用して体質強化を行ってきた。しかし、大豆あとのコシヒカリでは、穂肥を施す余地のない生育になるのが普通である。
畑期間(年数)が長いほど水田雑草が少なくなる。大豆の根の深根化によって、下層土へのひび割れが深くなり、酸化層が厚くなる。透水性がよくなる。
これまでの稲の根系は作土内に浅く分布している。大豆あとでは、多分(データはない)、酸化層の深化に伴って、ひび割れと大豆の根跡を伝って、これまでよりも根系が深くなると思われる(根系調査を奨めたい)。稲の根系が深くなれば、稲の棹基部と根による棹の支持力が強くなるであろう。
基肥チッソは0、疎植でスタートする。出穂期前20~10日のロミカ粒剤散布を用意する。基肥0のため、療法土壌で葉色が淡くなることがあればスミショート14で補うこともできる。用水はこれまで以上に多く必要。
コシヒカリは将来性のない虚弱品種であったものを、新潟県が類い稀な食味に目を付けて誕生させてしまった。その時から日本の品種選定の物指しが変わってしまって、コシヒカリとその子孫品種全盛の時代になった、と専門家達が嘆いている。
しかし、コシヒカリは消費者に支えられて、農業環境が変わるたびに開発された栽培技術によって潜在的美質が磨き出されて環境適応性を拡げている。それでもコシヒカリの倒伏しやすい欠点がなおったわけではなく、転作あとや直播に向く品種ではないと言われている。3割転作の土地利用型稲作の中で、今後、コシヒカリはどのように応えるであろうか。