季節のご相談から

【「季節のご相談から」 ~ひげ仙人の農薬なんでも相談室~】その9.(長野県/岡山県の農家様)ぶどうの晩腐病や黒とう病の発生も多くなっており、生育期での薬剤防除だけでは的確な防除が難しくなっています。休眠期防除との体系処理が有効とのことなので、休眠期防除の薬剤について教えて下さい。

このコーナーでは、これまで弊社のお客様相談室に寄せられた農薬に関するお問い合わせから、解決方法や参考情報などをシリーズでお届けします。

長野県/岡山県の農家様
ぶどうの晩腐病や黒とう病の発生も多くなっており、生育期での薬剤防除だけでは的確な防除が難しくなっています。休眠期防除との体系処理が有効とのことなので、休眠期防除の薬剤について教えて下さい。

 晩腐病、黒とう病、つる割病は春先の降雨により感染が広がる病害で、新梢や幼果に感染することにより、生育期での被害を大きくします。

 晩腐病は主として果実に発病し収量に大きな影響を与える重要病害ですが、薬剤防除だけでは対処できない難防除病害です。病原菌は切り残しの穂軸、巻きひげ、結果母枝の樹皮組織に菌糸の形で越冬し、翌春に平均気温が15℃程度になると分生胞子を形成して伝染源となります。胞子は雨滴により飛散しますので、降雨の多い梅雨期に飛散し感染が広がります。そこで、休眠期防除に加えて、開花期~袋掛け前の生育期防除を行うことが肝要です。また、無袋栽培では成熟期に降雨が多いと二次伝染を繰り返し、多発生しやすくなります。

 黒とう病は花穂、幼果、新梢などの柔らかい組織に感染し発病します。欧州系品種は罹病(感受)性が高く被害を受けやすいので問題となります。病原菌は結果母枝や巻きひげなどの罹病組織内で菌糸の形で越冬します。4~5月の降雨で病斑上に分生胞子を形成し、雨滴によって各部位に伝染することにより発病します。感染時期は早く、萌芽直後から生育初期に連続降雨が有ると発病が多くなるので、休眠期防除に加え、展葉初期~果粒肥大期の早い時期からの生育期防除が必要となります。

 つる割病は主として新梢や葉で発生する病害です。
病原菌は結果母枝の表皮や罹病組織の中で菌糸や分生子殻(柄子殻)の形で越冬します。
春先の降雨で分生子殻(柄子殻)に形成された分生胞子が飛散し、若い組織から侵入感染します。発芽前から生育初期に降雨が続くと発生が多くなりますので、生育期の薬剤防除は早目に行い、また、休眠期防除は必須です。

(休眠期防除)

 晩腐病、黒とう病、つる割病は結果母枝などで越冬した病原菌が感染源となります。
休眠期防除は萌芽前に第一次伝染源となる分生胞子の形成を抑え、生育初期の発病を抑制します。生育期での防除と体系で処理することでより効率的な防除が可能になり、病害発生を低く抑える事ができる有効な防除法です。

 地域により発芽時期が異なりますが、休眠期防除では発芽直前の3月中旬~4月上旬にベンレート水和剤を200倍で散布することをお奨めします。
 ・ベンレート水和剤の適用内容(休眠期防除)
   適用病害名(希釈倍数):晩腐病・黒とう病・つる割病(200~500倍)
   枝膨病(200倍)
   使用液量:200~700L/10a
   使用時期:休眠期
   使用回数:1回(休眠期での使用回数は1回、生育期での散布は3回)
   使用方法:散布
   注意点:石灰硫黄合剤と混用する場合は、ベンレート水和剤を先に水に溶かしてから石灰硫黄合剤を加用してください。

(生育期防除)

 展葉期~果実肥大期での晩腐病黒とう病防除には、浸透移行性があり治療効果に優れ灰色かび病やうどんこ病との同時防除が出来るスクレアフロアブルをローテーション防除の1剤としてお勧めします。
 ・スクレアフロアブル:
   適用病害名(希釈倍数):晩腐病・黒とう病・うどんこ病・灰色かび病(2000~3000倍)
   使用液量:200~700L/10a
   使用時期:収穫前日まで
   使用回数:3回以内
   使用方法:散布
   注意点:晩腐病・黒とう病の発生が多い場合には、2000倍で散布します。
   果粉の溶脱を生じるおそれがあるので注意してください。
   一部の地域ではQoI(ストロビルリン系)剤に対して低感受性の晩腐病菌の存在が報告されていますので、ご使用に際しては地域の防除指導に従ってください。

(耕種的防除)

 これらの病害に高い防除効果を得るためには、休眠期防除や生育期防除だけでなく、耕種的防除(巻きひげ除去等)や物理的防除(傘かけ、袋掛け)も組みあわせた総合防除が必要です。

 越冬病菌は結果母枝、切り残しの果梗、巻きひげなどに潜んでおり、それが翌年の感染源となりますので、休眠期に果梗や巻きひげを切除する等の耕種的防除を行います。

 園内の通風採光をはかり、多湿にならないようにすることも大事です。


製品詳細に関しては以下をご参照ください。

「ベンレート水和剤」の
製品ページ

「スクレアフロアブル」の
製品ページ

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