ウインタースポーツで名高い志賀高原、野生猿の入浴で知られる地獄谷温泉など観光名所にも恵まれた長野県山ノ内町。車で走っているとりんご園が次々と視界に入ってきます。私たちを出迎えてくれたのは、ふじをメインに1.2haのりんごを手がける青木さん。りんごは共選場出荷のほか、その品質の高さがクチコミで広がった贈答用直販も手がけていらっしゃいます。
「昔は収量がとれればお金になった時代だったけど、今は違う」。そう話す青木さんが手がけるりんごは、省力を目的としたわい化栽培や新わい化栽培ではなく、昔ながらの普通栽培。マルバ台木を使用し、樹と樹が干渉しないように適度な間隔をあけ、親枝を干渉する枝を剪定して、程よい空間をつくってゆくのが基本なのだとか。
りんごの栽培は、剪定、摘花、摘果など必要な作業を適期にやるのが重要。病害虫防除も同じだね」
青木さんの地域では、長年JAの防除暦に基づいた共同防除を推進。地域が一体となって病害虫を減らそうと取り組んでいるそうです。
メインのふじは、4月から9月までの期間で約2週間に1回、計12回の病害虫防除をスピードスプレーヤーで行うという青木さん。8月下旬には殺虫の仕上げ防除としてイカズチWDGを使用していらっしゃいます。
「毎年、暦通りに防除してるから、シンクイムシ類、ハマキムシ類は全然出てないし、キンモンホソガもすごく発生量が減ったみたい」。
では、なぜイカズチWDGが仕上げ防除に使われているのでしょうか。その理由について青木さんはこう言います。
「イカズチWDGは、最後の守護神みたいな感じだね。とにかく害虫を一掃する力が強いし、残効も1か月ぐらいあるみたいだから、これをまいておけば収穫まで安心なんだ」。
「害虫を一掃し、越冬させず、翌年に卵が残りにくくなることで発生密度が低く抑えられる」と青木さん。合成ピレスロイド剤に対して大きな信頼を寄せています。
青木さんの園地では、70年続くりんごの樹もあるのだとか。ぶどうを手がける息子さんとともに、昔ながらの栽培法で質の高いりんごをつくっていきたい──そう話す優しい笑顔に、匠の情熱が感じられる取材でした。