季節のご相談から

【「季節のご相談から」 ~ひげ仙人の農薬なんでも相談室~】その8.(埼玉県/千葉県の農家様)秋冬ねぎで葉枯病、黒斑病等の発生に悩まされています。特に葉枯病の発生が増えて品質低下の被害が多くなっています。これらの病害の同時防除ができる薬剤と防除法を紹介してください。また、晩秋期に発病拡大する土壌病害の黒腐菌核病についても防除薬剤と防除法を紹介してください。

このコーナーでは、これまで弊社のお客様相談室に寄せられた農薬に関するお問い合わせから、解決方法や参考情報などをシリーズでお届けします。

埼玉県/千葉県の農家様
秋冬ねぎで葉枯病、黒斑病等の発生に悩まされています。特に葉枯病の発生が増えて品質低下の被害が多くなっています。これらの病害の同時防除ができる薬剤と防除法を紹介してください。また、晩秋期に発病拡大する土壌病害の黒腐菌核病についても防除薬剤と防除法を紹介してください。

A-1:(葉枯病など)

 葉枯病は子のう菌類に属する病原菌による病害です。病徴としては、葉身先端部に発生する先枯れ病斑、葉身中央部に発生する斑点病斑、中心葉の基部に発生する黄色斑紋病斑の3つに分類されます。病原菌は被害植物上で越冬し、春に子のう胞子を飛散させて伝染します。その後病斑上に分生子を形成し、分生子の飛散により伝染を繰り返し隣接株に発病(先枯れ病斑、斑点病斑)が拡大していきます。秋冬ねぎの収穫期になると、先枯れ病斑、斑点病斑上に形成された分生子が飛散して中心葉に付着・感染し黄色斑紋病斑を形成します。この黄色斑紋病斑は収穫期に出荷部位の中心葉に発生するので品質低下を招きます。
 近年は 東日本の露地根深ねぎ産地で発生が多くなっている病害で、平均気温15℃~20℃で曇天が続くと発生しやすくなります。梅雨時と秋期多雨時に発生が多く 過繁茂で風通しの悪い圃場で発生しやすくなります。以下に説明する黒斑病やさび病と発生条件が重なり、同時発生(混発)するので被害を大きくします。
 黒斑病は不完全菌類に分類される病原菌により葉、葉鞘、花梗に発生します。被害植物上で菌糸や分生子として越年し、翌春に分生子を飛散させて伝染します。葉枯病と病斑が似ており、多湿条件で発生しやすくなるので梅雨期、秋雨期に発生が多くなります。
 さび病は担子菌類に分類される病原菌によって、主に葉に黄橙色の病斑を作ります。被害植物体で冬胞子の形で越冬し、翌春、夏胞子を形成し飛散して伝染します。春と秋に2回発生し、比較的低温で降雨が多いと多発します。

 秋冬ねぎにおいては、葉枯病、黒斑病、さび病は秋雨時期に同時に発生する病害ですので、これら3病害に活性の高いカナメフロアブルによる防除をお奨めします。カナメフロアブルはインピルフルキサムを有効成分とするSDHI剤です。多くの糸状菌に抗菌活性を示しますが、特にねぎの葉枯病菌・黒腐菌核病菌や豆類の菌核病菌などの子のう菌類や、ねぎのさび病菌や白絹病菌等の担子菌類に対して高い抗菌活性を示します。浸透移行性を有していますので、優れた予防効果に加え、感染初期の発病抑制効果と残効性、耐雨性があり安定した効果を示します。また多くの作物で収穫前日まで使えます。

 ねぎの葉枯病、黒斑病、さび病は主として生育中期以降に発生する病害で、それらの防除にはカナメフロアブルをダコニール1000などの他系統の薬剤と組み合わせて散布することをお奨めします。カナメフロアブルは予防効果と感染初期の発病抑制効果を有するので、発生初期の予防防除に重点を置き、葉身全体に薬液が付着するように散布します。特に葉枯病の黄色斑紋病斑が発生する時期は中心葉に薬液がしっかりと付着するように、展着剤を加用し生育量にあわせて十分量の薬液を丁寧に散布します。薬剤は各病害の発生状況に合わせて7~10日おきに数回散布します。
 発生初期からの散布が効果的なので、病徴を早期発見することが重要です。特に葉枯病の黄色斑紋病斑は中心葉のみに発生し立毛中は見逃しやすいので注意深く観察します。
 べと病も同時期に発生することが多いので、べと病に予防効果のあるダコニール1000や治療的な効果もあるベネセット水和剤(黒斑病にも登録あり)と体系で使用することをお奨めします。
 また、耕種的防除も組み合わせると一層効果的です。具体的には、罹病植物残渣は伝染源になりますので圃場に放置しないで圃場外で処分します。密植を避け、風通しを良くすることで発病環境を少なくします。


A-2:(黒腐菌核病)

 黒腐菌核病は土壌中に生き残った菌核が感染源となり、苗が定植されると菌核が発芽して菌糸を伸長し、根や茎盤部(根の付け根付近の葉鞘下端部)から感染して発病し菌核を形成します。茎盤部付近の地温が20℃以下になる時期から感染が進みます。降雨により発病が進み晩秋期に被害が拡大します。病原菌は土壌中で数年間生存するので防除が困難で、定植前の土壌消毒や耕種的防除と生育期の株元散布等の薬剤処理を組合わすことによる総合的防除が必要です。

 カナメフロアブルは晩秋期に発病拡大する黒腐菌核病にも株元散布で高い効果を示します。発病が見られてからでは防除が難しいので、地温が20℃付近に下がり始める頃の土寄せ前に実施します。薬剤が株元の土壌中に浸み込むように、カナメフロアブルの4000倍希釈液を、規定(100~300L/10a)内で多めの水量(200~300L/10a)で展着剤を加用して土寄せ前に株元散布します。
 作用機構の異なるスミレックス水和剤(株元散布)との体系処理がお奨めです。
 耕種的防除として、罹病株の圃場外での処分、輪作の実施、深耕による天地返し、土壌pHの調整、太陽熱利用の土壌消毒 等を行い、薬剤防除と組み合わせて防除を行います。


(白絹病)

 カナメフロアブルは担子菌類菌による白絹病に対しても効果を示します。初夏から初秋に発生が多くなる白絹病に対しても、株元散布で優れた効果を示します。


製品詳細に関しては以下をご参照ください。

「カナメフロアブル」の
製品ページ

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