ナスの原産地はインド東部といわれ、この地方には野生種も存在しています。ナスはインドでは十分越冬ができ、多年生となり樹木のようになります。日本では施設園芸以外越冬できない1年生の作物になります。
4~5世紀頃に中国に渡来して、いろいろな用途に使われ始めました。日本には8世紀(奈良時代)に渡来しています。ヨーロッパには遥かに遅れて13世紀にようやく伝来しました。
まず草の姿ですが、上へ上へと伸びる直立性から、横に這うようになる横繁性まであります。果実の色も白緑色から赤紫色、黒紫色と、果形もすごく長い長形から、長卵形、短卵形、電球形、丸形、巾着形まで多くの種類があります。また果皮も大変柔らかいものから随分厚く堅いものまであり、果肉も大変柔らかいものからよく締まった堅いものまで千差万別です。
定植は晴天無風の夕方がもっとも適しているのは、他の果菜類と変わりはありません。ナスは暖かい日に植えるのと寒い日に植えるのでは初期生育に大きな差がでます。次項4)(2)に書いた通り10cm下の地温が14℃以上は絶対に必要です。苗は25~30℃の温水に浸してから植えます。
植え穴にも同様の温水を十分入れておけば、定植してからよほどお天気が続かない限り、灌水の必要はありません。十分水を施さないで定植してあとから強く灌水すると、株もとの土を締め過ぎてしまい、その後の発根が悪くなり、これも初期生育に影響します。
整枝は昔から行われていたのは、3本整枝といって主枝と上位2本の枝を伸ばし、後の枝は除去するようにします。この方法は剪定は楽ですが、過繁茂になり易いことと果実の成り方にムラが多いという欠点があります。営利栽培では主枝3~4本のV字型整枝がほとんどですが、マメに結果枝の切り戻しを行う必要があります。また最近は初期収量をあげることと、省力のため1本整枝も増えてきました(写真(14)(15)参照)。
ナスは露地栽培でも、4、5月に定植して6月から10月まで収穫が続く長期作物です。この間、元肥一発の施肥で各期間平たく生育させて、しかも常にすぐれた果実を収穫するため苦心して設計したのが、住友化学の「露地ナス一発722」と「越冬ナス一発3号」です。
ナスの施肥はこのどちらかで栽培は十分可能であり、マルチ下に無理に追肥する手間も不要になりました。ただし露地栽培の場合、東海・近畿以西では、8月以降1~2回の追肥を行ったほうが成績が良いようです。
(1) 露地用全量元肥用肥料
[施肥例 1] 10aあたり |
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注1) 堆肥4,000kg/10a、土壌改良剤適量を施用する。 注2) 火山灰土では燐酸資材を加用する。 注3) 暖地では8月以降1~2回の「スミカエース2号」などの施肥を考える。 |
[施肥例 2] 10aあたり |
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注1) 堆肥4,000kg/10a、土壌改良剤適量を施用する。 注2) 火山灰土では燐酸資材を加用する。 注3) 後期に時折灌水が必要(8月頃から効果のある被覆肥料溶出のため)。 注4) 暖地では8月以降1~2回の「スミカエース2号」などの施肥を考える。 |
(2)越冬栽培用ナス一発
[施肥例 3] 10aあたり |
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注1) 堆肥4,000kg/10a、土壌改良剤適量を施用する。 注2) 火山灰土では燐酸資材を加用する。 |