本格的な野菜作り

VOL.2
キャベツのすべて

6月は日本国中何処でも、どのような品種でもキャベツを撒けるシーズンです

  1. キャベツのルーツを知ろう
    1. 日本でのキャベツの品種と周年栽培への発展
      ・甘藍や玉菜の時代
      ・春まき→初夏まき→秋まき→夏まき→サワーキャベツと発展
      <もっとも安全な播種期、春まきから初夏まきへ>
      <大苗で越冬してもとう立ちがない秋まき早生>
      <夏まきの発展とF1時代>
      <うまいもの指向のサワーキャベツ>
    2. キャベツの特性と栄養価
      ・うまいキャベツは
      ・キャベツの栄養価は
  2. 日本での作型
    1. 一年中日本のどこかでキャベツが出荷されています。
      ・日本一の産地は群馬県の嬬恋村
      ・夏まきの晩生と秋まきの早生が産地ではドッキング
  3. 品種と栽培
    1. 6月まき品種の選択
      ・家庭でおいしく食べられる品種選び
      ・営利栽培や連作地では耐病性品種を
    2. 苗床での管理(種まきから植え付けまで)
      ・播種床・仮植床の作り方
    3. 上手な定植の仕方
    4. キャベツの生育の特性と施肥法
    5. 一発肥料の紹介
    6. 病害虫対策

1キャベツのルーツを知ろう

1-1 日本でのキャベツの品種と周年栽培への発展

甘藍や玉菜の時代

日本で食用として最初に実用的栽培が始まったのは、明治になってからといわれています。政府の欧米化政策で、舶来穀菜類の一貫として明治7(1874)年には山形・岩手・敦賀(現福井)・筑摩(現長野)の各県に種子が配布され、また北海道開拓使も導入しています。戦後まで公式な名称は「甘藍(かんらん)」といわれ、農村では「玉菜」と呼ぶのが普通でしたが、最近ではキャベツに名称は統一されています。

春まき→初夏まき→秋まき→夏まき→サワーキャベツと発展

<最も安全な播種期、春まきから初夏まきへ>
キャベツは不適切な時期に種まきをすると結球しないでとうが立ち、種どり栽培になってしまいます。私達の先輩は失敗を繰り返しながら、春から初夏にかけてが、結球を収穫するには最も安定した種まき時期であることを見つけました。明治期に導入されたといわれる岩手県の「南部」甘藍や北海道の「札幌大球」などは当初春から初夏にまかれていました。
<大苗で越冬してもとう立ちがない秋まき早生>
器用な日本人としては何とかして一年中キャベツを食べたいと、秋まきして冬低温になってもとう立ちしない早生品種を選抜しようと大きな努力が図られました。中野庫太郎氏(東京)、野崎鋼次郎氏(愛知)など多数の方が品種改良に努力しました。
<夏まきの発展とF1時代>
以上は戦前の日本のキャベツの動向でしたが、戦後はアメリカからの品種導入などもあり、夏まき冬どりの品種が勢力を伸ばしてきました。特に実用的なキャベツの一代交配(F1)品種である「長岡交配1号(タキイ)」の発表から、多くの夏まき品種が一代交配(F1)として発表されました。冬どりは愛知県(豊橋・渥美地方)が本場ですが、千葉県(銚子)でも従来の秋まき品種で前進を図って冬だしも行われています。また最近は下火ですが、雪の下からキャベツを掘り出したり、雪消え直後に出荷する「雪中甘藍」「雪下甘藍」の栽培も行われました。
西の産地・島根県JA雲南「三井野原」
西の産地・島根県JA雲南「三井野原」
日本一の産地・群馬県嬬恋村
日本一の産地・群馬県嬬恋村
関東平野の産地・茨城県岩井市
関東平野の産地・茨城県岩井市
<うまいもの指向のサワーキャベツ>
また戦後大きく伸びたのはおいしいキャベツ作りということです。俗にサワーキャベツ等と言われていますが、大きく三つのスタイルがあります。
タイプ(1)は戦前からあった秋まき早生キャベツを前進栽培して晩秋から冬に収穫しようとする試みですが、寒波にやられたり、とうを立たせてしまったり、鳥にやられたり、かなりご苦労が多いようです。
タイプ(2)は長野県で始められた試みですが、北欧系の丸玉キャベツの品種が良いことに着目して、「グリーンボール」とネーミングして発売されました。日本で改良したグリーンボール系の品種にも数多くありますが、割れ易い品種は味がよく、逆に形は丸型で平野部でも作り易い品種もありますが、味は落ちるようです。
タイプ(3)は戦後秋谷良三氏が台湾から持参した「葉深」という耐暑性と食味の良さを兼ね備えた品種を利用したものです。愛知県の「川崎」という品種と交配したものが大部分ですが、おいしいキャベツが食べられなかった真夏から初秋の食味の改革には大きく貢献しています。これらはサワーキャベツ三兄弟といえるものでしょう。
一時期、一世を風靡した「グリーンボール」(サカタのタネ)
一時期、一世を風靡した
「グリーンボール」(サカタのタネ)
寒さにあったキャベツはアントシアンで変色・「さくら」(タキイ種苗)
寒さにあったキャベツはアントシアンで変色
「さくら」(タキイ種苗)
「やひこ」より僅か味は落ちるが裂球が遅い「柳生」(大和農園)
「やひこ」より僅か味は落ちるが
裂球が遅い「柳生」(大和農園)

1-2 キャベツの特性と栄養価

うまいキャベツは

多くのキャベツは貯蔵力が高いものが多く、冬一面に銀世界になるような多雪地帯では冬期間の大切な貯蔵食でした。また雪を被るとアクが抜けておいしくなるということから、雪の下から掘り出したキャベツを出荷しているところも北海道にはあります。またサワー系のキャベツは何処で栽培してもおいしくなりますが、日温格差の大きい山間の盆地では、なおおいしいキャベツになります。

キャベツの栄養価は

キャベツの栄養価は胃腸の働きを良くする成分が含まれており、医薬にも用いられています。ビタミンではB1とCが多く、ミネラルではカリウムとカルシウムが含まれています。

2日本での作型

2-1 一年中日本のどこかでキャベツが出荷されています

日本一の産地は群馬県の嬬恋村

日本一の産地は、春・初夏まきは群馬県の嬬恋村、夏まきは愛知県、秋まき早生は千葉県銚子と神奈川県三浦、西は産地が分散しています。

夏まき晩生と秋まきの早生が産地ではドッキング=それでとう立ちの問題が

やはり品質のよいキャベツが消費者には喜ばれています。夏まきの冬どりの品種は寒さに強い代わりに品質がイマイチの場合のことが多いのです。そこで比較的品質のよい秋まき早生用の品種(いわゆる新キャベツ)の前進栽培が始まりましたが、寒さの被害を受けたり、結球の中のとうが生長しすぎたり問題が多いようです。

図1は新潟県でのキャベツの周年作型ですが、暖地では春まきはより前進できますし、夏まきはより遅らせることができます。新潟県ではキャベツが結球せずとうが立ってしまう播種期は、品種によって若干の違いはありますが、8月7日~9月5日頃の間です。しかし暖地ではこれより遅く、寒地ではこれより早い時期になります。

図1.新潟県中心の周年作型 秋まき越冬作型を除いて小雪地基準
図1.新潟県中心の周年作型 秋まき越冬作型を除いて小雪地基準
播種床:現在は水稲の育苗箱を利用することが多い。品種によって発芽が随分違う。
播種床:
現在は水稲の育苗箱を利用することが多い。
品種によって発芽が随分違う。
セルトレイ(連結ポット)に2粒まきのキャベツ。左のようにまいて、セルトレイに仮植する方法もある。
セルトレイ(連結ポット)に
2粒まきのキャベツ。
左のようにまいて、セルトレイに
仮植する方法もある。
手作業のキャベツ定植:夏期は活着までの灌水が重要、豊橋近郊にて
手作業のキャベツ定植:
夏期は活着までの灌水が重要、
豊橋近郊にて

3今や全量元肥(一発施肥)の時代

3-1 6月まき品種の選択

家庭でおいしく食べられる品種選び

キャベツは品種によって味は随分異なるものです。6月まきの品種の中には、台湾原産の「葉深」×「川崎」の組み合わせの品種の中においしいものが沢山あります。一例として、味は最高だが裂球しやすい「やひこ」、「やひこ」より味はやや劣るが裂球しにくい「柳生」を紹介します。 また冬どりの寒玉の品種の中ではもっとも味がよい「さくら(タキイ交配晩夏蒔四月穫)」を紹介します。冬を越すと大変な赤紫色(アントシアン)に着色します。しかし2~3枚皮をむけば緑色になります。この品種は暖地ではほとんど8月まきです。

営利栽培や連作地では耐病性品種を

多くの産地は「萎黄病」や「根こぶ病」など土壌伝染性の病害に悩まされているところが多いのです。そのようなところは多少食味が落ちても、YRAとかYCRなどの病害抵抗性の品種が栽培されています。

3-2 苗床での管理(種まきから植え付けまで)

播種床・仮植床の作り方、育苗の要領

種まき通常、水稲の育苗箱には市販の種床用の床土を入れ、すじ蒔きとします。蒔いたら軽く覆土をして手のひらで十分土を押さえつけます(鎮圧といいます)。その上に新聞紙を2重にかけて新聞紙の上から十分灌水します。今日種を蒔けば中2日おいて3日目の朝に発芽が揃いますから、2日目の夜に新聞紙をとり去っておきます。 その後4~5日程度で鉢上げをしますが、葉菜育成用の床土を満たした連結ポット(セルトレイ)に仮植します。以前は本葉8枚頃まで育苗したこともありましたが、定植時に十分灌水できるところや、6月まきの早生品種では、特にセルトレイ利用では本葉4~5枚程度で定植したほうが成績が上がります。

3-3 苗床での管理(種まきから植え付けまで)

6・7月は一番日が長い時なので、晴天の午後3時頃から定植作業を始めます。梅雨明け前でしたら、キャベツはそう灌水を心配しないでも簡単に活着しますが、梅雨明け後で毎日晴天が続くようでしたら、定植してから5日間は連日灌水をするなど手入れをして下さい。定植後5日間でうまく活着するかどうかが決定します。

3-4 キャベツ生育の特性と施肥法

栽植密度

以前はアール当たり250~300本程度の密度でしたが、最近は500~550本程度の密植が普通です。以前は1玉2kg以上の結球も珍しくありませんでしたが、最近は1.0~1.2kg程度が普通です。 2条だきうね120cm巾のうねに32cm間隔で植えるとアール(100m2)あたり520本植えになります。

生育特性

キャベツは初期生育が重要です。まず立派な外葉を作らないと立派な結球はできません。定植後40日で外葉の葉長が35cmを目標にします。それから結球が完了するまで40日かそれ以上の日数がかかりますから、最後まで肥切れしないほうが商品性のある結球を収穫できます。

3-5 一発肥料の紹介

キャベツは一日も早く外葉を十分に展開させなければなりません。そのため一日も早く活着させ、その勢いで外葉をどんどん伸ばします。 住友化学の製品でキャベツの一発施肥に適した銘柄をあげておきます。これらの肥料の施肥前に石灰資材(消石灰ならば100kg/10a)を打ち起こし前に散布しておきます。肥料散布すきこみ後に、うね立て定植を行います。

肥料
銘柄名
スミカエース1号
(18-10-14)
硝燐加特2号
(16-8-12+微量要素)
+CRスミカエース10
(10-10-10+微量要素)
SSR肥料葉菜根菜072L
(20-17-12-Mg1-B0.2)
用途 窒素18%の中で硝酸態窒素を7.5%も含みますので、低温時の初期生育は抜群です。早春~春まきに最適。初夏まきも使用できます。 スミカエース1号より硝酸態窒素が少なくなりますが、5~6月蒔きには最適の設計になります。季節によって硝燐加特2号の量を加減します。 夏まきキャベツでは各地で実証済みの優れた効果。低温期はやや初期肥効に問題。6月まきには全国各地で使用可能。
使用法 10aあたり7~8袋(窒素成分で25.2~28.8㎏)を全面に散布して耕うん機などで畑土に十分すき混みます。 硝燐加特2号=10aあたり4袋、CRスミカエース10=6~8袋(窒素成分で24.8~28.8kg)全園散布混和。 10aあたり6~7袋を畑地全面に散布し、耕うん機、トラクター等で十分畑土にすき混みます。
注意点 施肥直後に大雨が降ると、硝酸態窒素を流亡させてしまうことがあります。しかし早春~初夏は大雨は極暖地を除き少ないものです。 低温時期は硝燐加特2号を多くし、7月まき7月下旬~8月中旬植えでしたら、寒地を除きCRスミカエース10だけでも有効です。 多くの畑はカリに過剰になっているのでこの設計でよいが、キャベツは栽培後期にかなりカリを吸収するので、連用の場合はカリの補給が必要。

3-6 病虫害対策

キャベツの病害

萎黄病・・・抵抗性品種の利用、土壌消毒
根こぶ病・・ダコソイル・ネビジン粉剤・フロンサイド粉剤の使用、抵抗性品種の利用
黒腐病・・・ナレート水和剤・バリダシン液剤5・ボルドー(水和剤)の使用

キャベツの虫害

コナガ・・・・ディアナSC、プレオフロアブル、パダンSG水溶剤、エスマルクDF、フローバックDFなど
アオムシ・ヨトウムシ・・・アグロスリン水和剤、アディオン乳剤、ハクサップ水和剤、ディアナSC、プレオフロアブルなど
アブラムシ類・・・・アグロスリン水和剤、アディオン乳剤、ダントツ水溶剤、ハクサップ水和剤、粘着くん液剤など

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