甘藍や玉菜の時代
日本で食用として最初に実用的栽培が始まったのは、明治になってからといわれています。政府の欧米化政策で、舶来穀菜類の一貫として明治7(1874)年には山形・岩手・敦賀(現福井)・筑摩(現長野)の各県に種子が配布され、また北海道開拓使も導入しています。戦後まで公式な名称は「甘藍(かんらん)」といわれ、農村では「玉菜」と呼ぶのが普通でしたが、最近ではキャベツに名称は統一されています。
春まき→初夏まき→秋まき→夏まき→サワーキャベツと発展
うまいキャベツは
多くのキャベツは貯蔵力が高いものが多く、冬一面に銀世界になるような多雪地帯では冬期間の大切な貯蔵食でした。また雪を被るとアクが抜けておいしくなるということから、雪の下から掘り出したキャベツを出荷しているところも北海道にはあります。またサワー系のキャベツは何処で栽培してもおいしくなりますが、日温格差の大きい山間の盆地では、なおおいしいキャベツになります。
キャベツの栄養価は
キャベツの栄養価は胃腸の働きを良くする成分が含まれており、医薬にも用いられています。ビタミンではB1とCが多く、ミネラルではカリウムとカルシウムが含まれています。
日本一の産地は群馬県の嬬恋村
日本一の産地は、春・初夏まきは群馬県の嬬恋村、夏まきは愛知県、秋まき早生は千葉県銚子と神奈川県三浦、西は産地が分散しています。
夏まき晩生と秋まきの早生が産地ではドッキング=それでとう立ちの問題が
やはり品質のよいキャベツが消費者には喜ばれています。夏まきの冬どりの品種は寒さに強い代わりに品質がイマイチの場合のことが多いのです。そこで比較的品質のよい秋まき早生用の品種(いわゆる新キャベツ)の前進栽培が始まりましたが、寒さの被害を受けたり、結球の中のとうが生長しすぎたり問題が多いようです。
図1は新潟県でのキャベツの周年作型ですが、暖地では春まきはより前進できますし、夏まきはより遅らせることができます。新潟県ではキャベツが結球せずとうが立ってしまう播種期は、品種によって若干の違いはありますが、8月7日~9月5日頃の間です。しかし暖地ではこれより遅く、寒地ではこれより早い時期になります。
家庭でおいしく食べられる品種選び
キャベツは品種によって味は随分異なるものです。6月まきの品種の中には、台湾原産の「葉深」×「川崎」の組み合わせの品種の中においしいものが沢山あります。一例として、味は最高だが裂球しやすい「やひこ」、「やひこ」より味はやや劣るが裂球しにくい「柳生」を紹介します。 また冬どりの寒玉の品種の中ではもっとも味がよい「さくら(タキイ交配晩夏蒔四月穫)」を紹介します。冬を越すと大変な赤紫色(アントシアン)に着色します。しかし2~3枚皮をむけば緑色になります。この品種は暖地ではほとんど8月まきです。
営利栽培や連作地では耐病性品種を
多くの産地は「萎黄病」や「根こぶ病」など土壌伝染性の病害に悩まされているところが多いのです。そのようなところは多少食味が落ちても、YRAとかYCRなどの病害抵抗性の品種が栽培されています。
播種床・仮植床の作り方、育苗の要領
種まき通常、水稲の育苗箱には市販の種床用の床土を入れ、すじ蒔きとします。蒔いたら軽く覆土をして手のひらで十分土を押さえつけます(鎮圧といいます)。その上に新聞紙を2重にかけて新聞紙の上から十分灌水します。今日種を蒔けば中2日おいて3日目の朝に発芽が揃いますから、2日目の夜に新聞紙をとり去っておきます。 その後4~5日程度で鉢上げをしますが、葉菜育成用の床土を満たした連結ポット(セルトレイ)に仮植します。以前は本葉8枚頃まで育苗したこともありましたが、定植時に十分灌水できるところや、6月まきの早生品種では、特にセルトレイ利用では本葉4~5枚程度で定植したほうが成績が上がります。
6・7月は一番日が長い時なので、晴天の午後3時頃から定植作業を始めます。梅雨明け前でしたら、キャベツはそう灌水を心配しないでも簡単に活着しますが、梅雨明け後で毎日晴天が続くようでしたら、定植してから5日間は連日灌水をするなど手入れをして下さい。定植後5日間でうまく活着するかどうかが決定します。
栽植密度
以前はアール当たり250~300本程度の密度でしたが、最近は500~550本程度の密植が普通です。以前は1玉2kg以上の結球も珍しくありませんでしたが、最近は1.0~1.2kg程度が普通です。 2条だきうね120cm巾のうねに32cm間隔で植えるとアール(100m2)あたり520本植えになります。
生育特性
キャベツは初期生育が重要です。まず立派な外葉を作らないと立派な結球はできません。定植後40日で外葉の葉長が35cmを目標にします。それから結球が完了するまで40日かそれ以上の日数がかかりますから、最後まで肥切れしないほうが商品性のある結球を収穫できます。
キャベツは一日も早く外葉を十分に展開させなければなりません。そのため一日も早く活着させ、その勢いで外葉をどんどん伸ばします。 住友化学の製品でキャベツの一発施肥に適した銘柄をあげておきます。これらの肥料の施肥前に石灰資材(消石灰ならば100kg/10a)を打ち起こし前に散布しておきます。肥料散布すきこみ後に、うね立て定植を行います。
肥料 銘柄名 |
スミカエース1号 (18-10-14) |
硝燐加特2号 (16-8-12+微量要素) +CRスミカエース10 (10-10-10+微量要素) |
SSR肥料葉菜根菜072L (20-17-12-Mg1-B0.2) |
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用途 | 窒素18%の中で硝酸態窒素を7.5%も含みますので、低温時の初期生育は抜群です。早春~春まきに最適。初夏まきも使用できます。 | スミカエース1号より硝酸態窒素が少なくなりますが、5~6月蒔きには最適の設計になります。季節によって硝燐加特2号の量を加減します。 | 夏まきキャベツでは各地で実証済みの優れた効果。低温期はやや初期肥効に問題。6月まきには全国各地で使用可能。 |
使用法 | 10aあたり7~8袋(窒素成分で25.2~28.8㎏)を全面に散布して耕うん機などで畑土に十分すき混みます。 | 硝燐加特2号=10aあたり4袋、CRスミカエース10=6~8袋(窒素成分で24.8~28.8kg)全園散布混和。 | 10aあたり6~7袋を畑地全面に散布し、耕うん機、トラクター等で十分畑土にすき混みます。 |
注意点 | 施肥直後に大雨が降ると、硝酸態窒素を流亡させてしまうことがあります。しかし早春~初夏は大雨は極暖地を除き少ないものです。 | 低温時期は硝燐加特2号を多くし、7月まき7月下旬~8月中旬植えでしたら、寒地を除きCRスミカエース10だけでも有効です。 | 多くの畑はカリに過剰になっているのでこの設計でよいが、キャベツは栽培後期にかなりカリを吸収するので、連用の場合はカリの補給が必要。 |
キャベツの病害
萎黄病・・・抵抗性品種の利用、土壌消毒
根こぶ病・・ダコソイル・ネビジン粉剤・フロンサイド粉剤の使用、抵抗性品種の利用
黒腐病・・・ナレート水和剤・バリダシン液剤5・ボルドー(水和剤)の使用
キャベツの虫害
コナガ・・・・ディアナSC、プレオフロアブル、パダンSG水溶剤、エスマルクDF、フローバックDFなど
アオムシ・ヨトウムシ・・・アグロスリン水和剤、アディオン乳剤、ハクサップ水和剤、ディアナSC、プレオフロアブルなど
アブラムシ類・・・・アグロスリン水和剤、アディオン乳剤、ダントツ水溶剤、ハクサップ水和剤、粘着くん液剤など