自分で育苗されるプロの方も多いと思いますが、今日は購入苗の良否の見分け方からお話しましょう。春植えの苗はプラグ苗・セル成形苗のような小型の苗よりは、10cm以上の鉢に鉢上げしてある大苗のほうが春は育て易いし、開花結実までも早いものです。
ではどんな苗が良い苗なのでしょう?
どのような苗でも徒長しておらずガッチリ育っており、葉色は濃過ぎず、均整の取れた苗を選びましょう。植えてある鉢はあまり小さいと根がすっかり鉢の周辺に回っていて活着がよくありません。
毎年土壌伝染性の病害で生育途中に枯れてしまうような畑では、特にキュウリ・トマト・ナスは接木苗を選びましょう。接木苗でも台木の種類ではトマトの青枯病、ナスの半枯病を防ぎ切れないことがあります。よく園芸店に相談しましょう。
果菜類の根がよく活着するかどうかは、土壌水分だけではありません。土壌の温度(地温)が大きく影響します。最近気象変動が甚だしく、暑い夏のような日が来たと思えばまた寒さがぶり返してきます。暖かい日が2~3日続くような日の前に植えられれば、その後多少寒い日が来ても大きな障害は出ないものです。
普通植える果菜類のうち、一番低温に強いのはトマトです。同じナス科でも最も寒さに弱く、高温を要求するのはナスです。
トマト→カボチャ→キュウリ→スイカ→メロン→ピーマン→ナスが大体の定植の順序です。
トマトでは10cm下の地温が10~12℃程度あれば植えられます。ところがナスでは15℃以上なければ活着しないだけでなく、後に地温が上がってきても根の伸長が鈍く、旺盛な生育をしないことがあります。
またオクラとモロヘイヤは特に早植えは禁物で、地温が20℃程度にならないとうまく活着しません。
春植えに使うのはポリエチレン製の「透明マルチ」です。果菜類は定植の1週間以上前に、施肥・うね立て・マルチ掛けをしておくことで地温も暖まり、果菜類の定植時期も5~7日は早まります。「黒マルチ」は雑草の防止効果は大きいのですが、地温を暖める効果はあまり高くありません。
肥料の空き袋等を利用した「アンドン」は特に風の強いところでは防風に有効です。しかし風があまり強すぎると、「アンドン」ごと風に飛ばされることがあります。この「アンドン」と「透明マルチ」の併用で、定植時期を若干早めることができます。
「ホットキャップ」は小規模の菜園ではよく使用されます。「トンネル」に比べて小型軽便ですが、小さいため高温障害を受け易いのが欠点です。活着後晴天が続くようでしたら、すぐ換気してください。高温が続くようでしたら「ホットキャップ」の天井を破ります。
「トンネル」は通常マルチと併用して使用します。素材は塩化ビニールが主です。「トンネル」を掛けることにより10日~15日程度の前進栽培が可能になります。「トンネル」栽培には保温・防風・雨除の効果がありますが、昼間換気しないとトンネルの中が大変な高温になって大きな被害を受けることもありますから、換気には十分注意してください。特に未活着の状態で、朝「トンネル」の換気が遅れ高温になってから慌てて換気すると、中の作物をしおれさせてしまうことがあります。この点は十分注意が必要です。
「トレファノサイド乳剤」を使用する場合、「トンネル」栽培併用で、定植のため直前に「マルチ」を切ると、そこからガスが発生して「トンネル」内に立ち込め、思わぬガス害を起こすことがあります。この対策として、定植7日以上前に散布し、マルチをかけます。その後、定植の数日前に定植箇所のマルチを切開し、気化した薬剤を飛散させてから定植すると、ガス害の心配はありません。「クレマート乳剤」を使用すればガス害の心配は全くありません。両剤共に除草剤を処理した土が茎や根の生長点に接触すると薬害を生ずることがありますので、ご注意ください。
まずうね面に植え穴を掘ります。この植え穴の底に「過燐酸石灰」を軽く一つまみ入れて土とよく混和しておきます。これは低温時の生育促進に大いに有効です。また植え穴に「ダントツ粒剤」を株当たり登録されている量を処理すると長期間「アブラムシ類」と「ミナミキイロアザミウマ」の防除に有効です。
定植時の灌水は、植え穴に予め温水(30℃前後)を入れておき、別に苗は温水(25℃程度)にドボンと浸してから、定植します。これらの温水は、土壌伝染性の病害を防ぐために一旦沸騰させた水をさますか、上水道の水(沸騰の必要無し)を使用してください。「立枯れ性疫病」等の原因となりますから、未消毒の河川、田園の用排水の水は絶対に使用しないように注意してください。苗の定植は畦(うね)面と水平の高さに植え、軽く土寄せすればよく、特に深植えにならないよう注意しましょう。
以前は作物の生育に合わせて順次肥料を施していく、ときには5回も6回も追肥する施肥法が当たり前でしたが、今では全量施肥(一発施肥)が当たり前のような時代が来ています。
追肥の回数が減らせるということが省力化で第一の利点です。最近の機能的な肥料は作物の必要な時期に必要なだけ溶出するということで、却って作物の栽培生理に合理的です。
「トマト」のように栽培初期の吸肥力が旺盛である品種とそうでないもの、「キュウリ」のように幼果を連続して収穫する必要があるもの、「ナス」のように長期にわたるもの、「メロン」「スイカ」のように収穫期には肥料がある程度切れていたほうが甘い果実を収穫できるものなど千差万別です。
住友化学では「スミカエース」シリーズの独特の「硝酸化成抑制材、DCS」入りの肥料、化成肥料と数種の被覆尿素を組み合わせたSSR肥料など、多数の機能的な肥料が用意されています。
使用肥料の成分量(N-P-K-Mg-Mn-B) | |
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EXスミカエース14 | 14-14-14-3.0-0.1-0.1 |
スミカユーキペレット777 | 7-7-7-0-0-0 |
スーパーSRコート果菜913M | 19-11-13-1-0-0.2 |
スーパーSRコート露地ナス722 | 17-12-12-0-0-0 |
作 物 | |||
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露地・施設トマト | 露地・施設キュウリ | 施設メロン | 露地ナス |
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5月定植8月まで収穫 | 5月定植9月まで収穫 | 4・5月定植7月収穫 | 5月定植10月まで収穫 |
望ましい施肥の効果 | |||
「桃太郎」のような元肥施肥に敏感な品種もあるので、初期肥効を抑えて常にマイルドに永続性のある施肥効果が望ましい。 | 果菜ではもっとも栄養生長型。最終収穫まで常時生き生きとした果実が連続収穫できる活力が必要。よい果実収穫には水管理も重要。 |
メロン初期に肥料が効き過ぎると草ぼけになり開花が不良になる。 完熟収穫時に肥料が効き過ぎていると甘いメロンはできない。 |
ナスは初期の単価の高いときに収量を上げようとすると、多肥となり石ナスになりやすい。これを避け最後までの肥効が必要。 |
全量元肥の10aあたり施肥設計 | |||
土壌EC=0.15以下で7段摘心。 「EXスミカエース」105kg(7袋)+「スミカユーキペレット777」200kg(10袋) =N成分量約30kg/10a |
土壌EC=0.20以下で20葉摘心。 「スーパーSRコート果菜913M」220kg(11袋) =N成分量約40kg/10a 低温期定植は「硝酸カルシウム肥料」10kg/10a追加 |
土壌EC=0.20以下で25葉摘心。 「EXスミカエース14」 60kg(4袋) 「スミカユーキペレット777」 100kg(5袋) =N成分量約15kg/10a |
土壌EC=0.20以下で1~3本仕立て。 「スーパーSRコート露地ナス722」300kg(15袋) =N成分量約50kg/10a 低温期定植は「硝酸カルシウム肥料」10kg/10a追加 |
有機は100%の有機配合またはカリ以外の100%有機配合でも可。 | 抑制栽培=夏秋の雨除け栽培で遅植えは10月まで収穫。 | 2番果まで収穫の時は、1番果収穫後に若干の追肥を行う。 | 東日本各地で利用され大きな成果を上げている。 |