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IPMの現状と今後
IPM《総合的害虫管理》とは
いま、なぜIPMか
IPMの実例《高知県施設果菜類》
土着天敵を利用する事例
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IPMに利用される技術
化学的防除について
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IPMの現状と今後 ーシリーズ(2)ー

いま、なぜIPMか

かつて、化学農薬がなかった時代の防除方法とはどのようなものだったのでしょうか。

すぐに思い浮かぶのは、田んぼや畑地の草むしり(物理的防除)でしょうか。また、教科書にも載っている有名な例ですが、中国では果樹園にアリ(ツムギアリの巣)を放し害虫を防除(生物的防除)する方法があったそうです。さらに日本の水田では、ウンカなどを防除するために、田に鯨油を入れそこに害虫類を叩き落とす方法(物理的防除)がありました。おそらく昔の農家の人達は、化学防除法以外のあらゆる防除方法を駆使して害虫(pest)や雑草と戦っていたのだと思います。

このような中で化学的防除法(いわゆる農薬散布による防除)の登場は、その効果もさることながら、害虫防除という大変な重労働からの解放という意味でも画期的なものでした。若い人達はご存知ないかと思いますが、現在ほど化学農薬が普及していなかった時代では、農家に腰が曲がったお年寄りが多く見られました。このような状況の中で、化学的防除が急速に普及していったのは、食料増産の時代とも重なって、ごく自然の成り行きだったと思われます。

ところが、当初は化学農薬の登場ですべてが解決したと思われた害虫防除にもいくつかの問題点が出てきました。とりわけ農薬に対する害虫の抵抗性の発達は、当初は誰も予想すらしなかったと思います。使用している一部の農薬は撒けば撒くほど効き難くなるという悪循環に陥ることで、大きな問題となりました。また、農業生態系(田んぼや果樹園、畑地など)の中には当然害虫以外にも多くの生物が活動しており、過度の殺虫剤散布などでそのような生態系に影響を与えると、かえって害虫だけが増え、効率的な防除方法とならない場合があることもわかってきました。実はIPM自体も当初抵抗性を回避する有効な手段という意味で提唱された経緯があります。つまり、化学防除だけにたよった防除法では、やがてその方法は破綻する、それを回避するためにIPMを導入しようという、技術的な問題解決方法だったわけです。

では、なぜ最近になってIPMが大きく取り上げられようになったのでしょうか。これにはおそらく技術的な側面と時代の変化によるものと思います。かつてはIPMを実施しようにもそれに応える技術は、ほとんどありませんでした。しかし、今では多数の天敵・微生物農薬や性フェロモン剤、さらに天敵などに加え、それらの天敵に影響のない選択的化学農薬、また防虫ネットや黄色蛍光灯などの物理的資材、あるいは熱水消毒や耐病性品種など、技術の進歩とともにIPMで使える資材や技術が豊富にそろいつつあります。一方、時代の変化の中で、たとえば「食の安全・安心」志向とIPMという概念は、非常にリンクしやすいと思います。

とはいえ、実際にIPMを実施するのは農家さんです。以前に比べて作物の品質や防除に費やす労力、コストなどがかさむようであれば、IPMの普及は困難になります。(H・M)

*次回からはIPMが実際に取り入れられている地域の事例や、今後普及するであろう技術について述べることにします。

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