本格的な野菜作り

VOL.10
ナスあれこれ

来歴と品種の発達、簡単な栽培法

  1. 原産はインド東部、各地へ伝来
    1. まず中国に入りそれから日本へ
    2. 多くの変わったナス、各地に地域性
  2. ナス品種の紹介
    1. 全国視野でいろいろな品種の紹介
    2. 漬ナスの在来品種が多い新潟県中下越の紹介
  3. 栽培
    1. 栽培のスタイル
    2. 育苗
    3. 定植と整枝
    4. 栽培の注意点
  4. 施肥
    1. ナス施肥の考え方
    2. 施肥の実際
  5. 病害虫防除
    1. 主な病害
    2. 主な虫害

1原産はインド東部、各地へ伝来

1-1 まず中国に入りそれから日本へ

写真(1)住友化学加西試験農場における肥料試験(V字型整枝の状況)
写真(1)
住友化学加西試験農場における
肥料試験(V字型整枝の状況)

ナスの原産地はインド東部といわれ、この地方には野生種も存在しています。ナスはインドでは十分越冬ができ、多年生となり樹木のようになります。日本では施設園芸以外越冬できない1年生の作物になります。

4~5世紀頃に中国に渡来して、いろいろな用途に使われ始めました。日本には8世紀(奈良時代)に渡来しています。ヨーロッパには遥かに遅れて13世紀にようやく伝来しました。

1-2 多くの変わったナス、各地に地域性

まず草の姿ですが、上へ上へと伸びる直立性から、横に這うようになる横繁性まであります。果実の色も白緑色から赤紫色、黒紫色と、果形もすごく長い長形から、長卵形、短卵形、電球形、丸形、巾着形まで多くの種類があります。また果皮も大変柔らかいものから随分厚く堅いものまであり、果肉も大変柔らかいものからよく締まった堅いものまで千差万別です。

2ナス品種の紹介

2-1 全国視野でいろいろな品種の紹介

(1)長ナスは九州に多い
ここは本長ナスの天下です。北部九州地区では在来の「博多長」「久留米長」等に変わり、商品出荷としてはタキイ種苗育成の「F1筑陽」に統一された感があります。長崎県ではより長い「新長崎長」が現在でもかなり栽培され、熊本県でもより短い「熊本長」よりこの「新長崎長」や「久留米長」の栽培が多いくらいです。九州以外で長ナスとして有名なものに「仙台長」(宮城県)、「津田長」(島根県)等があります。
写真(2)おそろしく長い「新長崎長」 天草にて
写真(2)
おそろしく長い「新長崎長」
天草にて
写真(3)熊本地方に多い「熊本長」 宮崎の「佐土原」がルーツ。
写真(3)
熊本地方に多い「熊本長」
宮崎の「佐土原」がルーツ。
写真(4)福岡県で栽培されている「F1筑陽」
写真(4)
福岡県で栽培されている
「F1筑陽」
(2) 全国的栽培の「F1千両2号」(タキイ種苗)
これほど新育成種が、従来の育成種や在来種に取って代わったことは大変なことです。後述する新潟県のように共存しているところもありますが、在来種を完全に撃滅してしまったところも少なくありません。
果皮も適当に柔らかく果肉も適当に締まり、漬物用に向き、果色も黒紫色で光沢もあり、しかも豊産ときていますから、ナスの最大公約数のような品種です。このため最近姿が見られなくなった品種は「F1橘真」「橘田」「真黒」「播磨」「河野」など多数に上ります。
(3) 京野菜や東日本各地で栽培の丸ナス
丸ナスの大きな特徴は果肉の締りがよく、煮食や貯蔵漬に用いられることです。果色は光沢の良黒紫色もありますが、煮汁を汚さないということで赤紫色や緑色の果色もあります。山形県の「窪田丸」、新潟県の「魚沼巾着」、「長岡(中島)巾着」、長野県の「小布施丸」、京都の「賀茂ナス(大芹川)」などは昔から栽培されています。以前は各地でかなり丸ナスの栽培は多かったようです。
またF1品種ではタキイ種苗の「早生大丸」がありますが、果色が赤紫色のため煮汁を汚さないと好評です。「ブラックビューティー」を始めとして、米国ナスも丸ナスの仲間にする人もいますが、果肉が柔らかすぎて、本来の日本の丸ナスとは肉質が全く異なっています。
上記の「長岡(中島)巾着」は、昔から長岡市の中島地区で栽培されており、「中島巾着」と呼ばれていましたが、長岡特産の野菜を大いに県内外にアピールしようとしている長岡中央青果の鈴木社長のお声掛かりで「長岡巾着」と改名されたものです。写真に示したように果肉も種果も巾着型のほうが味がよいと選抜されています。
また筆者が新潟園試に在勤当時育成した丸ナス「越の丸」は、新潟県西頚城郡能生町を中心に栽培され、東京では京野菜の「賀茂ナス」と同じ用途に使用できると、東京築地市場で人気商品になっています。
写真(5)新潟園試育成「越の丸」 西頚城郡能生町から東京出荷も行われている
写真(5)
新潟園試育成「越の丸」
西頚城郡能生町から
東京出荷も行われている
 写真(6)新潟県南魚沼郡六日町(旧場内村下原新田原産の「魚沼巾着」
写真(6)
新潟県南魚沼郡六日町
(旧場内村下原新田原産の「魚沼巾着」
写真(7)見事な色と光沢の「F1千両2号」住友化学加西試験農場
写真(7)
見事な色と光沢の「F1千両2号」
住友化学加西試験農場
写真(8)「長岡(中島)巾着」の青果
写真(8)
「長岡(中島)巾着」の青果
写真(9)「長岡(中島)巾着」の種果長岡市中島の原産、巾着状のシワの多いほど良品と言われています
写真(9)
「長岡(中島)巾着」の種果
長岡市中島の原産、
巾着状のシワの多いほど
良品と言われています
写真(10)東京市場まで出荷されている「F1 新潟黒十全」
写真(10)
東京市場まで出荷されている
「F1 新潟黒十全」
【補足説明】
本項について、新潟県長岡市の野菜専門農家さんである土田重兵衛様より、以下の補足説明をいただいています。追記します。
「中島巾着」は明治時代から長岡市の中島地区で栽培されており、同地区では昔から「丸ナス」と呼ばれています。近年では伝統野菜を見直す意識が高まったことから、市内全域で生産者が増え、生産地区や販売店により「中島巾着」「長岡ナス」「四郎丸ナス」「長岡巾着」の各名称で呼ばれる長岡の代表的なナスです。性質変化しやすいナスですが、長年の経験と知識を持つ中島地区の農家が自家採種を続けてきたことで性質と形質が維持されてきました。写真のように、果肉も種肉も巾着型の方が味がよいと選抜されています。

2-2 漬ナスの在来品種が多い新潟県中下越の紹介

(1)総理府の統計では、全国で一番ナスを食べるのは新潟市、次いで山形市
新潟県中下越地方には、盆踊りの歌として、「盆だてガンにナスの皮の雑炊(ゾウセイ)だ、あまりにてっこ盛で鼻焼いた」の歌詞が各地に残っています。盆だというのに「ナス」しか食べられないと自嘲的ですが、なんとなく「ナス」に対する親しみもこもっています。大して栄養はないが、庶民に欠かせない故郷の味となっています。
(2) 大阪の「泉州水ナス」が新潟に渡り本家の昔のスタイルを残す
皆さん「泉州水ナス」という品種をご存じでしょうか。大阪府の泉南郡地方に栽培されており、大変おいしい漬物用ナスです。この「泉州水ナス」の原型のような品種が新潟に存在しています。
昭和3年に新潟県中蒲原郡十全村(元村松町)に伝来したという「十全(白十全または本十全)」と、昭和15年に長岡市大島に伝来した「梨ナス」が、古いタイプの「泉州水ナス」の形態を今に伝えています。却って本家(泉佐野市)が果色だけを良くして形態・肉質もやや変化しているようです。昭和3年伝来のタイプはもう大阪では試験場にしか残っていないようです。
昭和15年伝来のタイプは現在でも和泉市付近で栽培されているのを見ました。昭和3年十全村導入タイプ「十全」より、昭和15年長岡市導入タイプ「梨ナス」のほうが果色が濃いので人気があり、「梨ナス」が下越に導入されて「黒十全」と呼ばれています。この「黒十全」の系統間F1が北越農事育成の「新潟黒十全」であり、県内はもとより東京市場にまで出荷されています。
【補足説明】
本項について、新潟県長岡市の野菜専門農家さんである土田重兵衛様より、以下の補足説明をいただいています。追記します。
長岡に梨ナスが導入されたのは昭和13年。中島地区の土田真十郎が白根から導入した泉州水ナス(十全なす)が最初であり、中島の農家は導入当初から「梨ナス」として販売していました。長岡市中島地区の梨ナスが本当の梨ナスで絹皮に比べて色が薄く、下越地区の白十全と全く同じです。昭和19年に大島地区の高橋種苗店で販売が開始された「絹皮ナス」が、既に知名度のある「梨ナス」に似ていることから「梨ナス」として販売されるようになりました。その後、昭和30年代に下越地区の種苗店がこれを入手して「黒十全」として販売するようになりました。色が濃いのが特徴です。
それゆえ、長岡市には2種類のナスが梨ナスとして存在しています。中島地区農家は「梨ナス」と「梨ナス黒、または黒十全」としてはっきり分けて認識していますが、他地区では同一品種として考えられることが多くなっています。
(3)九州の長ナス「佐土原」が新潟に渡り「鉛筆ナス」と「ヤキナス」に
また新潟には小型で漬物にする「鉛筆ナス」と、大型で焼きナスやふかしなすに利用する「ヤキナス」があります。「鉛筆ナス」は主として白根市で栽培され一口漬けに利用されていますが、「十全」同様皮は柔らかいのですが、肉質も大変柔らかいものです。
「ヤキナス」は豊栄市笹山で栽培されており、地域の特産になっており、かなりの大型で収穫します。高温期は果色が赤紫色に退色する傾向があります。超小型の「鉛筆ナス」と大型の「ヤキナス」が同一のルーツというのは面白いことです。
写真(12)先がとがっているので「鉛筆ナス」
写真(12)
先がとがっているので「鉛筆ナス」
写真(13)巨大な「ヤキナス」
写真(13)
巨大な「ヤキナス」

3栽培

3-1 栽培のスタイル

写真(14) 岡山県での大型施設の栽培。この作型は暖地の加温越冬栽培。V字型整枝法が普通。最近はU字型も増加。)
写真(14)
岡山県での大型施設の栽培。
この作型は暖地の加温越冬栽培。
V字型整枝法が普通。最近はU字型も増加。)
(1) 冬春栽培
西南暖地の施設ではV字型の整枝が普通です。露地栽培より密植しますから、V字よりU字型、またUV折衷型が増加してきました。
通常加温で越冬栽培を行います。品種は九州では「筑陽」が多く、岡山では「千両」が多くみられます。
写真(15)一本仕立てのナス 一本仕立てはV字型整枝より密植できて、初期収量も多くなります。剪定も楽になります
写真(15)
一本仕立てのナス
一本仕立てはV字型整枝より密植できて、
初期収量も多くなります。剪定も楽になります
(2) 夏秋栽培
4、5月頃トンネルマルチ使用またはマルチのみの栽培で、10月中旬前後まで栽培が続きます。営利栽培ではほとんどがV字型栽培法でしたが、最近は省力のための1本整枝も広がってきています。
写真(15)のように筒状に仕上がります。枝が垂下したら剪定し、次々成枝を更新していきます。

3-2 育苗

(1) 育苗の方法
ナスは土壌病害が多く、最近はほとんど接ぎ木苗を使用します。台木は「台太郎」「トルガムビガー」「トマシム」等を使用しますが、青枯病や半身萎凋病には接ぎ木をしても被害を受けることがあります。
またナスの種子は30℃の高温を維持しても発芽が極めて遅いものです。発芽前に乾燥し過ぎないように十分注意しましょう。箱に入れ、5cm間隔にまき溝をつけ1.2cm間隔に横並びにして上から手のひらで十分鎮圧をします。それから箱全面を新聞紙で覆います。床温は発芽直前まで30℃、発芽の兆候が見えたら直ちに温度を27℃程度は下げていくようにします。これらは低温期にはサーモスタットを上手に使用すると温度管理は楽になります。
台木は穂木より7日程度は早く蒔きますが、「トルバムギガー」は15日以上早く蒔きます。接ぎ木の方法は挿し接ぎとします。接ぎ木と同時に鉢上げをします。鉢上げ後の育苗日数は高温期で45日くらい、低温期で60日位が適当です。ナスは定植時の苗の大小にあまり影響されませんが、時期的に定植期が早過ぎたり、寒い日に定植するのは最も根の活着を悪くします。
(2) 購入苗の選び方
家庭菜園などで苗を購入する場合の注意点をお話します。素質のダメな苗は、ヒョロヒョロと徒長している苗です。葉数も少なく節間が伸びているのは、高温環境下で短期間に育苗し、能率だけを上げようとした苗作りです。
接木苗より無接木苗の方が価格は安いのですが、土壌病害が出ている圃場に植えるには、必ず接木苗を購入するようにします。「品種は」と尋ねて、返事が出来ないような店からは買わない方が安心です。また「青枯病」や「半身萎凋病」の常発地では、必ず台木の品種も確かめてください。

3-3 定植と整枝

写真(16)初期多収をねらった密植栽培。後に株の間引きが必要です。
写真(16)
初期多収をねらった密植栽培。
後に株の間引きが必要です。

定植は晴天無風の夕方がもっとも適しているのは、他の果菜類と変わりはありません。ナスは暖かい日に植えるのと寒い日に植えるのでは初期生育に大きな差がでます。次項4)(2)に書いた通り10cm下の地温が14℃以上は絶対に必要です。苗は25~30℃の温水に浸してから植えます。
植え穴にも同様の温水を十分入れておけば、定植してからよほどお天気が続かない限り、灌水の必要はありません。十分水を施さないで定植してあとから強く灌水すると、株もとの土を締め過ぎてしまい、その後の発根が悪くなり、これも初期生育に影響します。

整枝は昔から行われていたのは、3本整枝といって主枝と上位2本の枝を伸ばし、後の枝は除去するようにします。この方法は剪定は楽ですが、過繁茂になり易いことと果実の成り方にムラが多いという欠点があります。営利栽培では主枝3~4本のV字型整枝がほとんどですが、マメに結果枝の切り戻しを行う必要があります。また最近は初期収量をあげることと、省力のため1本整枝も増えてきました(写真(14)(15)参照)。

3-4 栽培の注意点

写真(17)マグネシウム欠乏症のナス。このように葉脈を残して、黄色に退色します
写真(17)
マグネシウム欠乏症のナス。
このように葉脈を残して、
黄色に退色します
(1) ナスはもともと熱帯作物
ナスはもともと熱帯作物でかなり高い気温と地温を必要とします。従って「冬春ナス」は茨城・千葉などにも産地はありますが、ほとんど西南暖地で栽培されています。オイルショックまではかなり寒い地帯でも暖房を利用する栽培がありましたが、現在では全くといってよいくらい見られなくなりました。
(2) 定植は暖かい日に
ナスの根はかなり気難しいところがあり、寒い日、地温の低いところに定植するとなかなか活着しません。大体地下10cmの地温が14℃以上は必要です。露地ナス栽培でマルチは必需品です。定植数日前に透明マルチをしておくと、かなり地温を上昇させることができます。
(3) 大切な1、2番果を石ナスにしないように
ナスは初期の肥効が強すぎると、堅くて大きくならない石ナスを作ってしまうことが多いのです。この対策としては硝酸性窒素の多い元肥を大量に投入するのは慎まなければなりません。「露地ナス一発722」は、全量元肥的な使用で、10aあたり50~60kg程度の窒素分を元肥として施用しても石ナスになることはありません。しかし同じ緩効性だからといって、「EXスミカエース14」を10aあたり50~60kgも入れると、石ナスの発生が多くなります。
これは「EXスミカエース14」は、DCSという硝酸化成抑制材が入っていて初期肥効が鈍いので、初期肥効のために硝酸態窒素を2.5%入れてあります。「EXスミカエース14」はトマトには30kg/10a、イチゴには20kg/10a、メロンには15kg/10a、程度の窒素量を全量元肥用肥料として設計されたものです。「EXスミカエース14」の全窒素量の50~60kgは、硝酸態窒素が9~11kgにもなり、ナスの元肥としては多すぎるのです。ちなみに肥料設計のところでお書きする「露地ナス一発722」は窒素60kg/10a入れても硝酸態窒素の量は3kg程度です。
(4) 案外多いマグネシウム欠乏症
現在の施設土壌は、燐酸やカリが過剰になっているものが多く見られます。特にカリが過剰になると、マグネシウムがある程度存在しても、なかなかナスの茎葉に吸収できなくなります。
写真(16)のような症状が出たら、水溶性硫酸マグネシウム肥料(「キーゼライト」など)を2~3袋/10a施用します。栽培に当たってカリとマグネシウムのバランスは大変大切なことです。
(5) ナスの光沢(ツヤ)を良くするには?
まず品種選びが重要です。最近の品種は色と光沢は大変優れるようになってきました。しかし昔からの地方品種には、中身の品質は良くても高温期に外観が劣ってくる品種も少なくありません。
次に深耕して根が良く張れるようにしましょう。立性の品種は自然に根も深く入るのですが、地方品種に多い横繁性の品種は根は深く入らず乾燥にも弱いものです。湿害にやられない程度の適度の灌水は、良質のナスを収穫するためには大切な要件です。また風ですれても光沢を失い、傷のついた果実を出荷することになります。写真(15)のように、露地栽培では必ず防風障を立てるようにしましょう。

4施肥

4-1 ナス施肥の考え方

ナスは露地栽培でも、4、5月に定植して6月から10月まで収穫が続く長期作物です。この間、元肥一発の施肥で各期間平たく生育させて、しかも常にすぐれた果実を収穫するため苦心して設計したのが、住友化学の「露地ナス一発722」と「越冬ナス一発3号」です。

ナスの施肥はこのどちらかで栽培は十分可能であり、マルチ下に無理に追肥する手間も不要になりました。ただし露地栽培の場合、東海・近畿以西では、8月以降1~2回の追肥を行ったほうが成績が良いようです。

4-2 施肥の実際

(1) 露地用全量元肥用肥料

[施肥例 1]
10aあたり
[施肥例 1] 10aあたり
注1) 堆肥4,000kg/10a、土壌改良剤適量を施用する。
注2) 火山灰土では燐酸資材を加用する。
注3) 暖地では8月以降1~2回の「スミカエース2号」などの施肥を考える。
[施肥例 2]
10aあたり
[施肥例 2]0aあたり
注1) 堆肥4,000kg/10a、土壌改良剤適量を施用する。
注2) 火山灰土では燐酸資材を加用する。
注3) 後期に時折灌水が必要(8月頃から効果のある被覆肥料溶出のため)。
注4) 暖地では8月以降1~2回の「スミカエース2号」などの施肥を考える。

(2)越冬栽培用ナス一発

[施肥例 3]
10aあたり
[施肥例 3]10aあたり
注1) 堆肥4,000kg/10a、土壌改良剤適量を施用する。
注2) 火山灰土では燐酸資材を加用する。

5病害虫防除

5-1 主な病害

(1)灰色かび病
主として施設内で比較的低温期に、湿度が高いと発生しやすくなります。 ホルモン剤を使うと果実から取れにくくなった花弁、ヘタ等にカビが生える頃に発生が多くなります。 「ピクシオDF」、「スミブレンド水和剤」、「スミレックス水和剤」、「ダコニール1000」、「ポリオキシンAL水溶剤「科研」」などが有効です。
菌核病も同じような条件で発生し、「ピクシオDF」、「スミレックス水和剤」などで防除できます。 菌核病が多発した翌年は、土壌をよく深耕しておくと効果的です。
(2)褐紋病
葉、茎、果実に発生します。最初葉に青白いぼやけたような病斑ができて、次第に拡大して健全部との境界がはっきりしてきて褐色病斑となります。 病斑の中央部は灰色となり輪紋状になります。 果実でも同心円状の輪紋が形成され、古い病斑では小黒点粒ができます。
(3)うどんこ病
葉に発生し下葉から次第に上の葉に及びます。 白いうどん粉を振り掛けたようになるのですぐ判別できます。 葉の色は緑色→淡黄色→黄褐色→落葉と変化します。 「ダコニール1000」、「ポリオキシンAL水溶剤「科研」」などの散布が有効です。
(4)すすかび病
施設栽培で発生します。 葉の裏に霜白色のビロード状の菌糸が密生し、病勢が進むと菌糸は斑点状のすす色から茶褐色に変化し、最後は部分的に枯れていきます。 「ダコニール1000」、「ポリオキシンAL水溶剤「科研」」等の散布が有効です。
(5)黒枯病
この病害も施設園芸で発生が多く見られます。 病徴は褐紋病と似ていますが小黒点粒はできません。 「ベンレート水和剤」、「ダコニール1000」等の散布が有効です。
(6)青枯病
土壌中に存在する細菌によって伝染します。 高温時に発生が多く、露地栽培ではこれから収穫が多くなり始めるという時期に、ある日突然茎葉がしおれ始めまもなく枯れてしまいます。 「クロルピクリン」、「バスアミド微粒剤」等で土壌消毒、「バリダシン液剤5」の散布、抵抗性の台木(「台太郎」「トルバムビガー」)に接木を行います。
(7)半身萎凋病・半枯病
病徴はよく似ていますが、数本ある枝の1本から病気が始まり次第に全体に及んでいく場合と、途中で病徴が収まり枯れるまでにはいかない場合もあります。 しかし収量は著しく低くなります。 半枯病は「赤ナス」の台木で防除できますが、半身萎凋病は「ベンレート水和剤」の登録があります。 土壌消毒は「クロルピクリン」、「バスアミド微粒剤」で防除可能です。

5-2 主な虫害

写真(18)ミナミキイロアザミウマに食害された九州の長ナス
写真(18)
ミナミキイロアザミウマに食害された
九州の長ナス
(1)アブラムシ
吸汁被害だけでなく、ウィルス(CMV)を伝播する被害もあります。 定植時に「ダントツ粒剤」、「ベストガード粒剤」、「スミフェート粒剤」等が有効です。
(2)コナジラミ類
施設園芸で多発しています。 育苗の苗床から持ち込むことが多いので、苗床での防除も怠れません。 多発の場合はかなり果実を汚しますので注意が必要です。 「アグロスリン乳剤・水和剤」、「アディオン乳剤」、「ハクサップ水和剤」、「ロディー乳剤」、「粘着くん液剤」などの散布が有効です。
(3)オオタバコガ
防除の困難な害虫の一つです。 幼虫が果実に食い込む時期のタイミングを逃さず防除の必要があります。 登録農薬は20近くありますが、主なものとして「ディアナSC」「プレオフロアブル」「エスマルクDF」「ハクサップ水和剤」等があげられます。
(4)ミナミキイロアザミウマ
葉や果実にも被害が出て食がい痕の残った果実は商品になりません。薬剤処理は被害の出る前から開始する必要があります。
まず定植時に植穴に「ベストガード粒剤」を株元散布し、土壌とよく混和しておきます。 また立毛中に有効な散布薬剤としては、「ダントツ水溶剤」、「プレオフロアブル」、「アグロスリン乳剤・水和剤」、「ベストガード水溶剤」等があります。
(5)オオニジュウヤホシテントウ(テントウムシダマシ)
山間部傾斜地のナス栽培に多く発生します。 好んで葉を食害し坊主にしてしまうこともあります。 「アディオン乳剤」、「サイアノックス乳剤」、「スミチオン乳剤」、「ダイアジノン水和剤34」などの散布が有効です。
(6)ダニ類(ナミハダニ・ニセナミハダニ・カンザワダニ)
露地栽培で晴天が続いたような時によく発生します。 施設栽培でも高温期になりナスがそろそろ成り疲れた頃に発生します。 登録農薬は多数有り、卵から幼若虫・成虫まで効果のあるものに次の薬剤があげられます。 何れもナスに登録があります。「スミロディー乳剤」、「ロディー乳剤」、「ポリオキシンAL水溶剤「科研」」、「粘着くん液剤」。
(7)ハスモンヨトウ
この虫も被害が南から次第に北に及んでいる害虫です。多食性のちょう目害虫で被害が大きい害虫です。 当社登録農薬は「ディアナSC」、「プレオフロアブル」、「ゼンターリ顆粒水和剤」、「フローバックDF」などがあります。
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